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2024.03.23
令和6年度あきる野市介護保険特別会計予算

辻よし子です。

新年度の介護保険特別会計予算について反対の討論をしました。
いつも介護保険については、委員会での質疑だけで討論はしてこなかったのですが、今回は政府の制度改定において、訪問介護の報酬引下げというあり得ない「改悪」がされたため、反対の討論をすることにしました。

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議案第29号 令和6年度あきる野市介護保険特別会計予算に、反対の立場から討論します。

2000年にスタートした介護保険制度は3年毎の改正を繰り返し、新年度から施行される2024年改正は、7回目の改正になります。

今回の改正については、当初、過去最悪の改正になるのではないかと危惧されていました。しかし、結果的には、要介護1・2の総合事業への移行、ケアプランの有料化、利用者負担・原則1割から2割への引き上げなどの改正案は、辛うじて見送られることになりました。

一方、介護報酬の改定については、介護人材不足が最も激しい訪問介護の報酬が、まさかのマイナス改定になり、介護事業者の間に激震が走りました。
介護現場や専門家からは、国に対して「ホームヘルパーは不要なのか!」との憤懣やるかたない抗議の声が、相次い上げられています。
市内の訪問介護事業者からも、「これまで、なんとか踏ん張ってきたが、心が折れた」「新たな人材を確保することは、もう、不可能。今いる高齢のヘルパーが退職した時点で廃業するしかない」等々の悲痛な声が届けられています。

国の責任であるとは言え、このような介護保険制度に基づいて組まれた本予算には賛成することができません。

今回のマイナス改定について、国は、訪問介護事業所の収支差率を反映したものと説明しています。つまり、訪問介護事業者は儲かっているので、報酬を引き下げるということです。
しかし、事業所の収支差率と訪問回数との相関関係を見ると、収支差率の平均値7.8%に達している事業所の訪問回数は、平均値未満の事業所と比べて圧倒的に多く、また、そうした事業所の数は、全体の中で少数です。おそらく各地に事業所を持つ規模の大きな介護サービス事業所なのでしょう。一方、平均値を下回っている事業所は相対的に訪問回数が少なく、事業所の数としては、こちらの方がはるかに多いことが分かります。おそらく地域で活動する小規模な事業所なのでしょう。収支差率の平均値が上がる一方で、倒産件数は過去最多という謎の答えは、ここにあったということです。

予算特別委員会において、市内の訪問介護事業所の収支差率について質問しましたが、市では把握していないとのことでした。各事業所の訪問回数を確認することで、収支差率のおおまかな傾向は掴めるかもしれません。

また、予算特別委員会での答弁を通し、同一建物減算の有る事業所は市内で1箇所のみとのことでした。同一建物減算とは、介護サービスを受ける利用者が介護事業所と同じ建物や同じ敷地内に住んでいる場合には、利用者のサービス利用料が減算されるしくみです。
介護事業者としては、効率よくサービスを提供できるため、同一建物減算の有る事業者の収支差率の平均は、無い事業者と比べて1.5倍近く高いことが厚労省のデータで示されています。それだけ儲かっているということです。その一方で、1軒1軒離れた個人宅を訪問し、サービスを提供している事業所の経営はますます厳しくなり、廃業寸前まで追い詰められています。
また、訪問介護の中でも、身体介護に比べて報酬額の低い生活援助については、今後さらにサービスの提供が難しくなることが危惧されます。市内にある事業所について、生活援助と身体介護のそれぞれのサービス提供時間数を比較すると、事業所によって大きな開きがあることが分かりました。最近では、経営上の理由から生活援助を断ることが多く、報酬額の高い身体介護サービスの提供に偏る傾向があると聞きます。このままでは、敬遠されがちな生活援助を引き受けている事業所が廃業に追い込まれ、その結果、市内の生活援助が著しい供給不足に陥る危険性もあります。

予算特別委員会でのホームヘルパー不足に関する市の答弁において、特に通所介護への送り出しの時間帯に、自宅から送迎車に移動するための訪問介護人材が不足しているとの答弁がありました。この点については、今回の介護保険制度の見直しの中で、訪問介護と通所介護の一体型サービスの新設が検討され、ヘルパー不足の解消に繋がるものと期待されていました。ところが、「制度が複雑化するだけで、利用者のメリットはそれほど大きくない」といった検討会議での否定的な意見に押されて、先送りされてしまいました。

あきる野市の新年度予算においては、訪問介護サービスの給付費が前年度比10%増になっていますが、本来必要とされる生活援助サービスが供給不足のために、提供出来ない事態に陥っていないか等、給付の内容を詳細に分析していただきたいと思います。また、訪問介護サービスが安定的に提供できるよう、市内の訪問介護事業所の経営実態の把握に努めてください。
介護保険制度は、措置制度とは異なり、被保険者にサービスの選択権が与えられている制度です。地域に根ざした小規模事業所が経営難で次々に廃業し、一律のサービスを提供する大手の事業所が独占するようになれば、実質的な選択権が失われることになります。そのようなことにならないよう、国に対し、介護保険制度の欠陥を現場の目線で厳しく指摘すると共に、自治体として可能な取組を市内事業者と連携して進めていただきたいと思います。

以上、本議案の反対討論とします。


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