辻よし子と歩む会
TOP プロフィール メッセージ 議員活動報告 市議会レポート くさしぎ 歩む会通信 歩む会へのお誘い お問い合わせ 辻よし子 on facebook

+ + + あきる野市議会議員辻よし子の議員活動報告 + + +

2023.03.25
3月議会 討論 (6/6) - 個人情報の保護に関する条例案に対する反対討論

辻よし子です。
3月議会最終日に行った6本目、最後の討論です。

議会の個人情報保護条例については、私と共産党で提出した条例案と、自公が提出した条例案の2つが審議されました。
私と共産党が提案し条例は、地方分権改革の中で地方自治体が独自に策定した現行の個人情報保護条例をベースに作ったものです。
一方、自公が提案した条例案は、国の改正法を基に全国市議会議長会が策定した条例案に倣って策定したものです。

国は、個人情報の利活用を目的に、地方分権に逆行する形でルールの一元化を図るために、法改正をおこないました。
ただし、議会は、改正法の対象からは外されているので、独自の条例を策定することができます。

ところが、全国市議会議長会では、改正法の議会版と言える条例案を策定し、ほとんどの議会がこの雛型を基に条例を策定しようとしています。
あきる野市議会でも、私たちの独自条例は賛成少数で否決され、全国市議会議長会に倣った条例案を可決されてしまいました。

多摩26市で、おそらく唯一かと思いますが、国立市議会が独自の条例を作ろうとしています。
この3月議会では間に合わず、最終日の昨日、決議が上げられました。
決議の中では、従来の条例で規定してきた自己情報コントロール権の保障、本人収集の原則、オンライン結合や目的外利用の規制などに
留意して条例を策定することが掲げられています。統一地方選の後、どのような条例が策定されていくのか注視したいと思います。

さて、以下、長くなりますが自公の提案した条例案に対する反対討論です。

⑥個人情報の保護に関する条例案に対する反対討論

****

議席番号2番、会派くさしぎの辻よし子です。
議員提出議案第5-3号 あきる野市議会の個人情報の保護に関する条例案に反対の立場から討論します。

 本3月定例会議に「あきる野市議会個人情報保護条例」および「あきる野市の市議会における個人情報保護条例」の2つの条例案が議員提出議案として提出された背景には、議員間において、個人情報保護法制における地方分権の考え方に大きな隔たりがあったものと理解しています。
 個人情報および情報公開等に関わる法制度である情報法制の、第一人者と言われる宇賀克也最高裁判所裁判官は、改正前の個人情報保護法制について、地方分権型の法制度であることが大きな特色の1つであるとしています。
 そこには、地方公共団体の保有する個人情報の保護について、最も適切に判断できるのは、住民に身近な地方公共団体であるという認識があり、地方公共団体は、国よりも住民に身近な団体として多様な個人情報を取り扱うからこそ、個人情報の取扱に係る諸問題を国よりも先に認知し、対策を講じうることが少なくない、と述べています。

 さらに、今後、地方公共団体が個人情報保護法の定める共通ルールを遵守することのみに意を用いて、あるべき個人情報保護法制について検討する意思を放棄してしまうとしたら、それはわが国の個人情報保護法制の発展にとって望ましくないと、警鐘を鳴らしています。

 地方公共団体が、住民に身近な行政として、住民の意思を汲み取り、国に先駆けて法制度を整備した例は、個人情報保護条例や情報公開条例だけに限りません。公害防止条例、環境アセスメント条例、景観条例、地球温暖化対策条例、空き家条例など、自治体独自の条例が数多く制定されてきました。
 国は、1999年に情報公開法、2003年に個人情報保護法、行政機関個人情報保護法を制定しましたが、その際、地方公共団体が保有する情報については、地方公共団体の条例の定めるルールに委ねるという、根拠法規区分主義と言われる立法方針が採用されました。
 これらの法整備は、地方自治体に対する国の行政的関与の廃止、緩和、縮減を目指した第一次地方分権改革が進展した時期と重なります。
 その後、2006年には地方分権法改革推進法が制定され、いわゆる第2次分権改革がスタートしました。

 第2次分権改革では、法律によって地方公共団体の事務運営を縛る立法的関与に焦点を当て、法令上の義務づけ、枠付けの廃止・緩和が進められました。
 こうした中、今回の個人情報保護法改正は、地方公共団体が保有する個人情報に対してまでも、国の定めたルールを適用し、一元化することを目的としており、これまでの地方分権改革の流れに、明らかに逆行するものです。
 一元化の大きな狙いは、個人情報の利活用の促進であり、共通ルール化を徹底するために、地方公共団体の条例改正に向けて、行き過ぎと思える「指導・助言」がおこなわれる事態となりました。そのため、個人情報保護改正を巡っては、法学者や地方公共団体などから様々な批判が噴出しました。
 以上のような個人情報保護法制における地方分権を巡る問題について、どのような認識を持つかによって、議会の個人情報保護条例制定に対する考え方が大きく変わってきます。地方分権に逆行する一元化に無批判であれば、議会においても共通ルール化に向け、全国市議会議長会の条例案例に倣って全国共通の条例を制定するのが最善ということになるでしょう。
 しかし、私は、地方分権に逆行する個人情報保護法制の共通ルール化には反対の立場であり、全国市議会議長会の条例案例に倣って策定された本条例案には賛成することはできません。
 特に、改正法において、議会は地方公共団体の組織から除かれており、現行のあきる野市個人情報保護条例をそのまま活かした条例を定めることができる立場にあります。それにもかかわらず、わざわざ改正法に従って、個人情報の定義、議会の責務、目的外利用等々において、個人情報保護のための規制を緩め、個人情報保護の後退につながる条例を定めることには、強く反対します。
 あきる野市議会では、条例制定に向け、個人情報保護条例検討プロジェクトチームで議論を重ねてきました。私からは、現行のあきる野市個人情報保護条例をそのまま活かした条例にすることを提案しましたが、それに対して、全国市議会議長会の条例案に倣わず独自の条例を制定することは、今後予想される条例改正の作業も考えると技術的に不可能であるという反対意見や、現行のあきる野市個人保護条例を活かして議会の条例を策定することは、改正法の第2章、第3章及び第69条第2項第3号の規定から改正法の趣旨に反するので認められないという反対意見が出されました。言わば入り口の段階で折り合わず、今回提案された2つの条例案の内容を比較し、個人情報の保護の後退につながる恐れはないのか、具体的な条文に即して議論するに至らなかったことを残念に思います。

 改正法の第2章、第3章及び第69条第2項第3号については、先の質問に対する答弁でも述べた通り、議会が独自の条例を定めることを排除したものではありません。東京大学大学院法学政治学研究科教授で、内閣官房個人情報保護制度の見直しに関する検討会構成員も務めた宍戸常寿(じょうじ)氏は、『2021年度改正・自治体職員のための個人情報保護法解説』の中で、法改正前に、すでに議会独自の個人情報保護条例を定めている自治体が複数あることを紹介し、「議会独自の個人情報保護条例を定めている場合は、今回の法改正の影響を特に受けることはない」と記しています。
 また、既に個人情報保護条例検討プロジェクトチームには情報提供しましたが、先に紹介した宇賀地克也氏は「新・個人情報保護法の逐条解説」において改正法が地方公共団体の定義から議会を除きながら、第2章、第3章及び第69条第2項第3号については議会も地方公共団体に含めるとしている理由について、次のように記しています。
 2章は「国及び地方公共団体の責務等」、3章は「個人情報の保護に関する施策等」について定めている。地方公共団体の責務や地方公共団体の施策のように具体的な法的規律を伴わないものについては、地方公共団体の議会を対象外とする理由はないので、議会を「地方公共団体の機関」に含めることとしている。

議会においては、現行の市の条例を十分活かすことができるにもかかわらず、その検討さえ怠り、ただただ改正法に追従する本条例案には賛成できません。
以上、本条例案の反対討論とします。

 <<< 前の記事      次の記事 >>> 


©copyright 2014- 辻よし子と歩む会, くさしぎ・草の根市議と市政を考える会