+ + + あきる野市議会議員辻よし子の議員活動報告 + + +
2021.03.31
本当にこんな議会でいいの!??
辻よし子です。
本日、午後3時から臨時議会が開かれました。
税制改正に伴う条例改正と補正予算が審議され、いずれも全会一致で可決されました。
その後、特養新設問題を巡り、議員の提出した2つの議案が審議されました。
ひとつは、「介護老人福祉施設の創設に関する調査特別委員会」の設置です。
賛成多数で可決されましたが、現市長が議員時代に所属していた会派未来(明るい未来をつくる会・立憲民主と無所属の会派)だけは反対しました。
最後に、私が提案者になって提出した条例案が審議されました。市が特養の新設を決めることについて、議会の議決を求めるという内容の条例です。
どのように提案理由を説明したら、この議案に反対を予定している会派の人たちに真意が伝わるだろうか・・・と原稿を書くのに、かなり悩みました。
しかし、結局、自分の思いをそのまま素直に書くしかなく、いつも通り「直球」の原稿になりました。
最後に原稿を貼り付けますので、ぜひ、お読み下さい。条例の中身と目的がお分かりいただけると思います。
提案理由を説明した後、反対の議員からいろいろ質問をいただきましたが、提案理由の中身とすれ違っている質問が多く、伝えることの難しさを感じました。
採決の結果は、自公と私が賛成、共産党と会派未来が反対という、これまでにない不思議な形で可決されました。
その後、予想通り市長から再議が出され、自公と私だけでは可決に必要な3分の2に1人足りず、残念ながら廃案になりました。
多分こうなるであろうことは分っていましたが、実際に廃案にされてみると、「本当にこんな議会でいいの!??」という憤り、
落胆、悔しさでいっぱいになりました。
以下が提案理由です。
*****
議員提出議案第3-2号 あきる野市議会の議決すべき事件に関する条例について、提案理由を説明させていただきます。
本議案は、あきる野市議会基本条例第14条第2項第2号の規定により、議会の議決すべき事件を定める条例を制定するものです。
議決すべき事件として、条例の第2条で定める内容は、介護老人福祉施設の創設に伴う整備計画に関する意見書の提出を決定することについてです。
民間事業者が市内に特別養護老人ホームを創設する場合には、東京都の認可を受ける際に、市の意見書が必要になります。
市としては、その意見書を提出するかどうかが、創設の是非を決める行為になりますので、その意見書提出の決定を議会の議決事件にするという条例です。
あきる野市議会基本条例第14条は、その条文にも示されているとおり、地方自治法第96条第2項の規定に基づいて定められたものです。
地方自治法第96条では、まず、第1項で15項目の議会の議決事件を定めています。15項目には、予算の議決、決算の認定、条例の制定改廃などが含まれます。
そして、第2項では、この15項目以外にも、条例によって議決事件を定めることができると規定しています。
つまり、第96条2項とは、もともと市長権限で決められる事柄についても、議会の議決に従うよう、市長権限を縛り、議会の権限を拡大するものです。
地方議会は議員内閣制の国会とは異なり、二元代表制です。市長も議員も、直接選挙によって選ばれていますが、ひとりに権限が集中する市長と、
多様な市民の意見が反映される合議制の議会とでは、その役割に大きな違いがあります。
市議会には、市長に対するけん制的・統制的な機能が求められています。そのために地方自治法では、必要に応じて議会の権限を拡大できる、
第96条第2項の規定が定められているのです。
さて、今回、特別養護老人ホーム、いわゆる特養の創設に関することを議会の議決事件にする理由は、特養の創設が、今後の高齢者福祉において
重要な政策であり、議会が市長と共に市民に対する責任を担うべき事件であると判断したからです。
市長の特養新設の方針については、早い段階で、介護事業者から創設に反対する陳情と再考を求める陳情の2つが議会に提出され、いずれも採択されました。
また、第8期あきる野市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画策定委員会においても、第8期の計画に特養の新設を盛り込むことには強い反対意見が出されました。
その結果、策定委員会としては第8期には特養を新設しないことを明示した計画案を策定し、市長に提出しました。
いずれも、民主主義的なプロセスに従い、民意として明確に示されたものです。
このことの重みを、私たち議会人は、まず、しっかりと押さえて置く必要があります。特に、陳情については、議会として採択した責任があります。
また、高齢者介護を担う当事者から出された陳情であることも忘れてはなりません。
特養の新設によって介護人材不足に拍車が掛かり介護施設の運営が立ち行かなくなるのではないかという不安や、すでに窮地に追い込まれている
在宅介護サービスが崩壊にしかねないという危機感など、多くの介護現場の切実な思いが陳情には込められています。
しかし、残念ながら市長は、こうした民意に対して真摯に向き合う姿勢も、理解をはかる努力もほとんど示すことなく、
策定委員会の計画案を覆して特養新設の方針を計画に盛り込みました。介護現場からは、コロナ禍という厳しい状況の中で時間と労力を裂いて
まとめ上げた民意が無視されたことに対して、失望と怒りの声が上がっています。
さらに、今回の特養の新設問題を混乱させているのは、特養そのものの必要性だけではなく、市有地の有効活用と特養新設に伴う東京都からの交付金が、
市長としての大きな政策目的になっていることです。ある意味、市長の特養新設の強い思いは、策定委員会が議論をしている土俵とは別の土俵にあるとも言えます。
そして、そちらの土俵については、議会も含め民意を反映させた議論はおこなわれていません。
こうした状況下において、私たち議会が果たすべき役割とはなんでしょうか。議会は、行政をチェックし民主的コントロールを及ぼす監視機関です。
「特養新設は市長権限である」として、この異常とも言える状況を議会が黙認するとすれば、本来果たすべき議会としての役割を放棄しているとして、
市民の失望と怒りは議会にも向けられることになるでしょう。
まさに、今こそ、地方自治法第96条第2項、および、あきる野市議会基本条例第14条第2項第2号に基づいて、議会の権限を拡大すべき時ではないでしょうか。
先ほどの動議の結果、特養の創設に関する調査特別委員会が設置されることになりました。
高齢者介護については市民の関心が高いにもかかわらず、今回の特養新設問題については、市民へ的確で十分な情報提供がされているとは言えません。
市民には、特養新設の是非そのものの議論の中身が見えず、単なる市長派 対 反市長派の政治的対立にしか見えていないのではないでしょうか。
その責任は議会側にもあります。
従って、新たなに設置する調査特別委員会においては意見の違いから出発するのではなく、市民にとって最善の選択とは何なのか、
議会が一丸となって答えを探る姿勢で臨まなければなりません。
ただ、調査特別委員会には市長の執行に対する何の権限もありません。委員会として提言や意見書を市長に出すことはできても、
それが実行される担保はないということです。その点においても、本条例の制定が必要であり、本条例の制定と調査特別委員会の設置とをセットで考えるのが当然ではないでしょうか。
提案理由の最後に、申し上げたいことがあります。
地方議会における賛否が、仮に、市長派であるか、反市長派であるかによって決められてしまうのであれば、市長派の議席が少ない議会では、
市長の提案はことごとく否決され、その上、もともと議会に諮る必要のなかったことまで、第96条2項を用いて議決事件としてしまえば、
市長は自らの政策を何一つ実現できないことに成りかねません。しかし、地方自治法第96条2項は、そのような稚拙な議会を想定してはいません。
二元代表制の地方議会では、市長派、反市長派という立場から離れて、行政をチェック監視する役割が課せられており、議会の良識を前提に、
より民主主義的なプロセスで物事が決められるよう、議会の権限の拡大を認めているのです。
本条例を制定してしまうと、反市長派によって市長の特養新設の計画が潰されることになる、として、条例制定に反対するのであれば、
それは自ら、良識ある議会の存在を否定することになります。それぞれの立場を越えて、虚心坦懐に相手の意見を聞き、
対立ではなく対話に努めていく姿勢がなければ、民主主義は成り立ちません。
率直に申し上げて、村木市長就任以来、あきる野市政も、あきる野市議会も、混沌とした状況にあります。
しかし、それは必ずしも悪いことでありません。硬直化が進む政治に刷新の可能性が広がります。
私たち議員も、混沌とした中で、これまでに気づかなかった議会の役割や潜在的能力に気づかされているのではないでしょうか。
今回の条例制定もそのひとつに他なりません。
今日、各会派のみなさんは、おそらく本議案への賛成、反対をすでに会派の中で決めて、この場に臨んでいらっしゃることと思います。
しかし、どうかもう一度、特養新設を市長に一任することが議会人として責任ある判断と言えるのかどうか、
ひとりの議員として、お考えいただきたいと思います。
以上です。
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