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2019.03.19
武蔵引田駅北口 土地区画整理事業特別会計予算 反対討論原稿

(以下、討論原稿を掲載します。)

議席番号2番。会派くさしぎの辻よし子です。
議案第37号 平成31年度あきる野市秋多都市計画事業武蔵引田駅北口土地区画整理事業特別会計予算に反対の立場から討論します。

2019年度の予算総額は10億519万9千円であり、その内、一般会計からの繰入金は1億4669万7千円、市債は7億200万円となります。
市の推計によれば、2025年度における引田駅北口土地区画整理事業特別会計の元金残高は23億9354万8千円となり、
市全体の元金残高の約6%を占めることになります。

自治体における収支の捉え方は、当然のことながら民間における収支の捉え方とは根本的に異なります。
財務書類においても、民間の損益計算書に当たる書類が、自治体においては行政コスト計算書と呼ばれます。
行政コスト計算書は経常的な費用に限られていますが、儲けを計算するものではなく、
行政サービスにどの程度のコストがかかったのかを示す書類になっています。
一方、政策決定に基づく投資的事業についての財源や資源分配については、純資産変動計算書に示されます。
そして、貸借対照表における純資産合計と負債合計の割合が、これまでの世代の負担と将来の世代の負担との割合を示します。

土地区画整理事業をおこなえば、当然、固定資産税の増収が見込まれますが、事業の負債と税収とのバランスを、
民間の損益勘定と同じように考えることはできません。
検証すべき課題は、事業によって生じる負債が、あきる野市の財政の身の丈に合った額なのか、ということと、
事業をおこなうことで、負債の額に相応しい行政サービスが得られるのか、という点にあります。
将来世代への負担の大きさを図るためには、負債の償還計画だけではなく、財務書類に基づいた分析が必要です。
特に土地区画整理事業によって建設される公共施設の用地の多くは、市が購入するわけではなく、減歩によって得られる土地です。
そのため、財務書類上、固定資産としてどのように扱うかが問題になります。
2018年度の事業では、起工承諾という例外的な手法を用いて、すでに道路建設工事が計画されています。
新設道路は、資産としてどのように計上されるのでしょうか。
将来に渡って必要となる経費が正しく反映され、また、市民に分かり易い財務書類となるよう、計上方法の早期改善を要望します。

武蔵引田駅北口土地区画整理事業が、あきる野市の財政状況と照らして合せて、身の丈にあった事業であるのかどうか判断するには、
予想される総事業費や財源内訳はもとより、将来人口や公共施設の更新費用など主だった財政上のシミュレーションに基づいて考えない限り、
生産的な議論は出来ません。本事業の是非を、そうした資料に基づいて議論したことはあったでしょうか。
少子高齢化社会を迎え、行政サービスの質と量の転換が求められる中、将来負担の大きい事業を提案する以上、もっと慎重な検討が必要でした。

二つ目に、負債の額に相応しい行政サービスが得られるのか、という問題です。
土地区画整理事業に即して言えば、莫大な経費をかけて街を作り替える必要があるのか、ということです。
構想が立てられた20年前に戻れば、あきる野市の中央に位置する引田駅周辺において、職住一体の複合的なまちづくりは、
それなりに魅力のある計画だったかもしれません。
しかし、時代は少しずつ動いています。駅周辺の広大な畑は、もはや、開発の遅れた田舎の駅を象徴する存在ではなくなりました。
駅周辺の広々とした、のどかな田園風景が気に入って引っ越して来たという夫婦や、子どもが土に触れることのできる身近な自然が
あきる野市の一番の魅力だという若い母親、どこにでもあるような駅前開発は要らない、今ある畑を活かして特産物をつくり、
直営のレストランを合わせた観光農園にできないかと語る新住民。
こうした方々の声を聞くと、畑に囲まれた小さな駅が新たな価値を生んでいることを実感します。
武蔵引田駅北口土地区画整理事業地内では、昨年12月に約9.6haの生産緑地の追加指定がおこなわれました。
しかし、その農地の約半分の予定換地先が、産業ゾーンなど農地として残すことが不可能な換地先であることから、
生産緑地法の理念から外れる、行政としてあるまじき行為であると、これまでも厳しく批判をしてきました。
もし、市が本気で地区内の農地を残すつもりであれば、改正された生産緑地法をフルに活用して、
まったく違ったまちづくりも可能だったのではないでしょうか。
農産物の特売場や農家レストラン、農福連携を目的とした市民農園など、駅前広場や基幹道路の整備をしつつ、農業を核にしたまちづくりです。
また、阿伎留医療センターと隣接している地の利を活かして、超高齢化社会に対応した街づくりも併せて考えられたでしょう。
門前町の門を、病院の院に置き換えた「院前町」という発想があります。
高齢者にとって住みやすいコンパクトシティを作っても、わざわざ引っ越してくる高齢者は多くはありません。
しかし、ひとつのきっかけとなるのが入院です。入院後、自宅で暮らすことが難しくなった高齢者が移り住む場所として、
病院の前に街をつくることが最適である、というのが、「院前町」の構想です。
時代に叶った公共性の高いまちづくりをするためには、初期の計画に縛られない柔軟性と、丁寧に住民と向き合う謙虚さと忍耐力が、
もっと必要だったのではないでしょうか。

次に、2019年度の事業における具体的な問題点を4点指摘しておきます。

1点目。現在、仮換地の個別説明に応じていない地権者が複数おり、また、個別説明で出された40人の意見の審議も終わっていません。
したがって、仮換地設計にはまだ時間を要します。それにもかかわらず、事業を早く進めたいというだけの理由で、
起工承諾という手法を用いて、前倒しで工事を着工することは、換地先の目処が立っていない地権者を置き去りにするものです。
地権者ひとりひとりに丁寧に寄り添って事業を進めるという市の約束に反します。

2点目。企業オオバへの委託料の中で、業務の内容から考えて、あまりにも高額と思える項目に関し、
再三、積算根拠を示すように求めてきました。しかし、未だに示されておらず、2019年度にも同じ業務が含まれています。

3点目。地区計画は、地権者が十分な話し合いを重ね、全員の合意と納得を得て策定すべき重要な計画です。
地区計画が策定されない内に、産業ゾーンや沿道ゾーンに進出する企業を限られた地権者だけで選択し協定を結ぶことは、
地区計画のあり方に反します。さらに、現在は、仮換地指定前であり、仮換地設計も決まっていない段階です。
つまり、換地後の産業ゾーンや沿道ゾーンの地権者はまだ決定したとは言えず、
ましてや、登記簿上の他人の土地を利用する権利の移行も終わっていません。
それにもかかわらず、換地後の地権者になるであろうと推測される予測的な地権者に対して、市が、企業選択の権利を与えることは、
公平性の観点からたいへん問題があります。

4点目。市では、仮換地の指定が終了した後に、用途地域の変更と地区計画の決定をおこなうとのことです。
しかし、用途地域の変更と地区計画の縦覧手続きの過程で原案を修正する必要が生じた場合、換地に影響を受ける地権者が出ることになるでしょう。
その場合には、仮換地設計をやり直すことになり、変更作業には大変な労力がかかります。
万が一、市が、縦覧手続きによる変更を想定していないとすれば、市自らが縦覧手続きの形骸化を認めることになり、大きな問題です。
本来は、用途地域の変更と地区計画を決定した上で、仮換地の指定をおこなうべきと考えます。

以上述べてきた通り、武蔵引田駅北口土地区画整理事業は、計画の立案と決定の方法に問題があり、
さらに、その後の事業の進め方にも様々な疑問点があることから、本予算案を認めることはできません。
これを以って、「あきる野市秋多都市計画武蔵引田駅北口土地区画整理事業平成31年度特別会計予算」の反対討論とします。

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